Adobe CC学割の裏ワザと注意点:本当にお得?フリーランスやクリエイターが知っておくべきポイント

デザイナー

Adobe Creative Cloud(Adobe CC)は、クリエイターにとって不可欠なツールですが、そのサブスクリプション費用は負担が大きいのも事実です。これまで多くのフリーランスやクリエイターが、安く購入するために「裏ワザ」としてデジハリなどを始めとしたオンラインスクールを利用し、学割価格でAdobe CCを手に入れていました。ブログやYouTubeで紹介されたこの方法は広く知られていますが、その実態や規約をしっかり理解していないとトラブルにもつながる可能性があります。

今回は、私自身が選んでいた「Amazonプライムセール」や、Adobe CC学割購入に関する複数の方法について、その利点とリスクを解説し、正しい選択をするための注意喚起を行います。

1. Amazonプライムセールの利用

私は、Adobe CCを安く手に入れる方法として、オンラインスクールの学割ではなく「Amazonプライムセール」を多く利用していました。これはAdobe公式が提供していた正規の年契約コードがセール時にAmazon経由で4〜5万円程度で購入できるもので、さらにAmazon側からも継続用のクーポン(約5%割引)が発行されることもありました。この方法は、学割ほどの割引率ではないものの、十分にお得でした。

しかし、2023年から2024年にかけて、Adobeの価格改定によりセールの割引率も減少し、多くの人がオンラインスクールの学割を利用するようになったようです。

また、Amazonプライムセールを利用してAdobe Creative Cloud(Adobe CC)を購入する方法は、公式セールで比較的安く手に入る点が魅力です。しかし、この方法にはデメリットもあります。

特に注意すべきは、「適格請求書(インボイス)の発行がない可能性がある」という点です。AdobeのライセンスをAmazon経由で購入した場合、特に個人アカウントでは、インボイス対応がなされないケースがあり、法人やフリーランスの方が仕入税額控除を受けるためには、適格請求書が必要となるため問題になる可能性があります。Adobeのライセンスはしばしば「Adobe Systems Software Ireland Limited」といった国外法人から提供されることがあり、これによりインボイス制度への対応が異なる場合があります。国外事業者が発行する場合、日本のインボイス制度に必ずしも対応していないことがあり、消費税の控除を目的とした適格請求書の発行ができないことがあります​。

具体的には、個人アカウントで購入した場合、出品者が適格請求書発行事業者として登録されていないと、適格請求書が発行されず、消費税の控除が受けられない場合があります。また、出品者が国外事業者の場合もインボイスの発行に対応しないことがあります​。
これにより、例えばAdobeのライセンスが「Adobe Systems Software Ireland Limited」経由で発行された場合、適格請求書の対応が異なる可能性があるため、購入前に出品者や発行元を確認することが重要です。

なお、Microsoft関連のソフトウェア等でも同様に、インボイスが発行されないケースがあるため、ビジネスで使用する場合には注意が必要です​。

このように、プライムセールを活用する場合でも、ビジネス利用を考えるフリーランスや法人の方は、インボイス対応について事前に確認し、もしインボイスが必要であれば、別の購入方法を検討することをおすすめします。

2. 「学割」には2つの種類がある:本来の学生向けとスクール経由の学割の違い

Adobe CCには、正規の「学割」と、オンラインスクール経由で提供される「学割」の2つの異なるタイプがあります。この2つのプランにはそれぞれ異なる条件や利用方法があり、特に商用利用の可否について混乱が生じることが多いです。ここでは、その違いを詳しく解説します。

正規の学割プラン(Adobe公式)

このプランは、正規の教育機関に在籍する学生および教職員を対象に、Adobeが直接提供する公式の学割プランです。具体的な対象者には以下が含まれます。

  • 対象者: 小中高の学生、大学生、専門学校生、またはその教職員
  • 価格: 正規プランよりも大幅に安い価格で提供(通常価格の約60%以上の割引)
  • 条件: 購入時に、在籍を証明するための学生証や、学校が提供するドメイン付きのメールアドレスの提示が必要です。
  • 商用利用について: このプランは、主に「学習目的」のために提供されており、商用利用は規約で禁止されています。つまり、プロとしてのデザイン業務やフリーランスとしての商業プロジェクトで利用することは許可されていません。

正規学割プランのポイント

  • 大幅割引: Adobeの公式学割プランは、最も大きな割引が提供されているため、実際に学生や教職員であれば非常にお得です。
  • 商用利用不可: 規約では商用利用はNGと明記されていますが、これを知らずに商業利用してしまうと、後々問題になる可能性があります。特にフリーランスの親が、子どもを学生として利用してこのプランを取得し、実際にはプロとしての作業に使用するケースも考えられますが、これは規約違反です。
  • 認証プロセス: 正規の学割プランを利用するためには、Adobeが指定する認証手続きが必要です。これには学生証の提示や、学校のメールアドレスの利用などがあります。

オンラインスクール経由の学割プラン

一方、デジタルハリウッド(デジハリ)などのオンラインスクールが提供している学割プランは、正規の学割とは異なる形で提供されています。このプランは、Adobeと提携するスクールが代理店を通じて学割価格を提供しているもので、次のような特徴があります。

  • 対象者: スクールの受講生(プロであっても受講中であれば利用可能)
  • 価格: 正規の学割よりやや高いが、通常価格よりも安く提供(通常価格の約30〜50%割引)
  • 条件: 受講生であることが前提。オンラインスクールに申し込み、受講費用の一部としてAdobe CCが学割価格で提供されます。
  • 商用利用について: 本来は「学習目的」のためのプランですが、スクール側の説明や、ブログやSNSでの口コミによって、商用利用も可能と誤解されるケースが多発しました。

オンラインスクール経由の学割プランのポイント

  • 受講生としての権利: このプランは、あくまで「受講生として学習に使う」ことを目的とした学割です。スクールが提供する講座は主に初級レベルが多く、フリーランスや経験豊富なプロには必要性が低い場合もありますが、Adobe CCを安く手に入れるために受講する人が多いのが実情です。
  • 商用利用の誤解: 商用利用に関しては曖昧な説明がされている場合があり、スクールや代理店によっては「商用利用OK」という説明をするところもあったため、受講生の間で誤解が生じています。しかし、Adobeの規約では、学割は本来「学習目的」に限定されており、商業利用については規約に厳密な規定がある可能性が高いです。
  • アフィリエイトの影響: 多くのブログやYouTubeでオンラインスクールの学割プランが「商用利用可能」として紹介された背景には、アフィリエイト収入を目的としたスクール側のマーケティング活動があります。この影響で、インフルエンサーたちが正しい情報を伝えないまま広めてしまった結果、さらなる混乱が生じました。

なお、Adobe提携のスクールは複数ありますが、ずっと提携が続いているかどうかは不明です。以前はデジハリと並んで有名であったヒューマンアカデミーの講座などのようには現在サービスを行っていないものもあります。また、運用方法や適用範囲についても、随時見直しがされている場合も多く、毎年更新の際に確認をしていくことは必須でしょう。

2つの学割プランの違いと混乱の原因

正規の学割プランとオンラインスクール経由の学割プランは、提供される背景や価格、対象者が異なるため、利用者がどちらのプランを利用しているかによって条件が大きく変わります。しかし、特にオンラインスクール経由の学割プランでは、商用利用が可能かどうかの「正確な公式情報」が明確でないまま広まってしまったため、ユーザーの間で混乱が広がっているのが現状です。

  1. 価格差と目的の違い: 正規の学割プランは、本来学生や教職員の学習を支援するためのものですが、オンラインスクール経由のプランは、プロフェッショナルでも受講生になれば利用できる点が大きな違いです。受講者の目的は、講座の受講よりもAdobe CCを安く手に入れることに重点が置かれているケースが多く、これが「裏ワザ」として広まる原因となりました。
  2. 商用利用の規約違反のリスク: 正規の学割でも、オンラインスクール経由の学割でも、商用利用に対して規約違反になるリスクがあります。特に、フリーランスや個人事業主がこの学割を利用して、商業活動にAdobe CCを使用する場合は、事前にAdobeに確認し、契約内容を正確に理解することが重要です。

3. 商用利用に関する誤解と問題点

オンラインスクール経由の学割プランは、「学習目的」として提供されていますが、多くのブログやYouTubeで「商用利用も可能」という説明が広まっていました。実際には、Adobeの規約や担当者によって解釈が異なることもあり、また、年度によって規約が変更される場合もあるため、どこまでが許容されるかは明確ではありません。

さらに、インフルエンサーたちがスクール側からのアフィリエイト案件を受け、商用利用も含めた「お得情報」として宣伝してしまったことで、さらに混乱が広がった可能性があります。そのため、商用目的でAdobe CCを利用する場合は、公式にAdobeへ確認し、正確な情報をもとに契約することが無難方法です。

4. 本当の「裏ワザ」とは?

実際に存在する2つの「裏ワザ」についても触れておきます。

  • 通信制大学に入学正式に教育機関の学生になれば、正規の学割でAdobe CCを購入できます。ただし、これは本来の学割であり、商用利用はできません。したがって、フリーランスやプロが仕事で使用する目的には向いていません。学習を目的とする場合は検討の一つとなるでしょう。
  • Adobeコミュニティエキスパートになる:Adobeの製品やサービスに精通し、コミュニティに貢献する「Adobeコミュニティエキスパート」に選ばれると、無料でAdobe CCが提供されます。ただし、エキスパートとしての活動や実績が必要で、審査に通るのは一部の優れたプロフェッショナルだけです。
  • しっかり仕事をして稼ぐ:業務で必要となるAdobeアプリを始め、必要経費を出してもなんともないように収入を安定させていくことを目標とします。

5. 今後のAdobe CC利用の選択肢と注意点

昨今のAdobe CCの価格上昇により、多くのプロクリエイターでさえも「使い続けるべきか」迷い始めています。特に日本では円安の影響もあり、米国での価格に関する価値観はあまり変わらないものの、日本のユーザーにとっては負担が大きくなっています。

これからの選択肢として、他の代替アプリへの移行や、制作会社との連携によるライセンスのシェアなどが考えられます。各自の状況に合わせて、最もコストパフォーマンスの高い方法を検討し、Adobe CCを利用し続けるのか、別の道を選ぶのかを見極める時期に来ているかもしれません。

結論

Adobe CCを安く手に入れるための方法は複数ありますが、それぞれのメリットとデメリット、そして商用利用の規約をしっかり理解することが重要です。特に、学割には2つの種類があり、安易に「商用利用も可能」と思い込むのは危険です。今後もAdobe CCの価格や代替ツールについて慎重に情報収集し、最適な契約方法を選びましょう。

それが「プロの仕事」の一つでもあるのです。

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